–山本さんは5年前に、自由が丘店で働き始めたんですよね。
2014年にオープニングスタッフのアルバイトとして入って、その後社員になり、店長になりました。自由が丘店にいたのは、最初の2年数ヶ月です。
–当時の思い出は?
とにかくずっと作っていた、という記憶です。自由が丘店は全国で唯一、工場のタルトではなくその場で作ったタルトを焼いて出すお店で。行列が朝から夜まで続いていたのもあって、必死でしたね。「北海道工場のタルトを使っていいよ」とも言われたのですが、自分たちで作るタルトのほうが絶対に美味しいから頼らないでいようと。もう何万個という数を焼きましたね。今振り返ると「私、工場だった」と思います(笑)。
–タルト作りの大変さは?
気温に左右されるところです。冬はチーズが硬い、夏はドロドロ。でも一定のクオリティで作らなきゃいけない。大変でした。
–ちなみに、いいチーズタルトの条件はあるのでしょうか。
表面がツヤツヤしているものは、チーズムースのブレンドがうまくいった証です。店頭には並びませんが、失敗したものは表面がデコボコになったり、割れてしまいます。
–今、あらためて自由が丘店のタルトを食べてみていかがですか?
やっぱり美味しいです。お店から離れても、ここのチーズタルトが一番だというのは揺るがなくて。工場と同じレシピのはずなのに、全然違って感じるんですよ。お客様の中にも「食べ比べたけどこのお店が一番!」と仰る方もいました。
–山本さんは5年間で業務内容がどんどん変わりましたね。今は関西のエリアマネージャーをしていて。
作る仕事をしたくてBAKEに入ったのですが、気づけば人に向き合う毎日になっていました。ずっと自由が丘店にいるつもりだったので、最初は正直不安でしたね。人間よりもタルトのほうが扱いやすいですし(笑)。でも立場が変わることで、自分の意外な長所に気づけたり。自分で道を切り拓く感覚は、ベンチャーならではだと思います。
–この5年間で一番感動したことはなんですか?
やっぱり、自由が丘店の思い出になってしまうのですが……ある日いつものようにタルトを焼いて、ショーケースに並べたんです。でも並べた瞬間、違和感がすごくて。それが、衝撃的なほど綺麗なチーズタルトだったんです。すべての色と形が完璧で、光って見えた。感動して「これは売りたくない」と思いましたね。何万個も作ってきたけれど、あんなチーズタルトは1回だけ。その光景は、今でも焼き付いています。
自由が丘店にて。「仕事上、別のブランドの制服を着ることもありますが、やっぱりチーズタルトの制服が一番しっくりきます。ここがホームだと感じますね」と山本さん。